公開日:2025年12月16日

この記事はこんな方におすすめです
はじめに
こんにちは、フリーランス保険組合です。
「すでにセンターで団体傷害保険に入っているから、これ以上は必要ない」
「国の労災保険と、今の保険。結局なにが違うの?」
日々、会員様の安全管理に尽力されている職員様ほど、このような疑問をお持ちではないでしょうか。
結論から申し上げますと、この2つの保険は「役割」が全く違います。
既存の保険(シルバー保険)
他人への賠償や、軽いケガに強い「守りの基本」
国の労災保険(特別加入)
入院が長引く大ケガや、高額な治療費に強い「万が一の切り札」
どちらか一つを選ぶ必要はありません。
特に、剪定や雪下ろしなどの「危険な業務」を行う会員様にとっては、両方の制度があることが、最強のセーフティネットになります。
この記事では、シルバー人材センターの職員様向けに、「既存の保険と労災の決定的な違い」と、「センターの手間を増やさずに安全体制を強化する方法」を解説します。
そもそも、役割が違います。「お見舞い」か「完全補償」か
「すでにセンターで保険に入っているから、労災なんていらないのでは?」
そう思われる職員の方も多いかもしれません。
しかし、この2つの保険はどちらかが優れているという話ではなく、「守備範囲(役割)」が全く違います。
ズバリ、一言で言うとこうなります。
既存の保険(シルバー団体傷害保険など)
役割: 「他人への賠償」と「軽いケガ」の備え
弱点: 本人の治療費に「上限」がある
国の労災保険(特別加入)
役割: 「本人の大ケガ」の完全補償
弱点: 他人への賠償(対人・対物)は出ない
つまり、「対人・対物はシルバー保険」で守り、「自分の体は労災」で守る。
この2つがあって初めて、完璧な安全体制になります。
「比較表付き」一番の違いは「治療費の上限」と「期限」
もっとも大きな違いは、「治療が長引いたとき(重大事故)」に出ます。
高齢の会員様の場合、骨折などで入院が長引くケースが多いため、ここが最大のリスクになります。
「高齢者の骨折」は、想像以上にお金がかかります
実際に、このようなケースをご存じではないでしょうか?
事例:脚立からの転落による「大腿骨(太ももの骨)」の骨折
- 手術: ボルトを入れる手術で高額な医療費が発生
- 入院: 手術前後の入院費
- リハビリ: 歩けるようになるまで、数ヶ月〜半年以上の通院が必要
これらを合計すると、治療費はあっという間に数十万〜百万円単位になります。
| ① 既存の保険(シルバー保険など) | ② 国の労災保険(特別加入) | |
| 他人への賠償 (窓を割った等) | ◎ 補償あり (センターにとって必須) | × 補償なし (対象外) |
| 本人の治療費 | △ 上限あり (例:100万円まで) | ◎ 全額0円 (上限なし) |
| 補償期間 | △ 日数制限あり (例:事故から180日のみ) | ◎ 治るまでずっと (一生涯続く場合も補償) |
・ここがポイント!
既存の保険は「180日で打ち切り」などの期限があることが一般的です。
もし、複雑骨折でリハビリが1年以上かかった場合、半年後からは「会員様の自己負担(財布からの持ち出し)」になってしまいます。
これが、会員様が既存の保険に対して不安を持つ原因になります。
「お互いの弱点を埋める!」運用のご提案(センターの手間はゼロです)
もちろん、どのような業務であっても、仕事中の怪我の治療費が「自己負担ゼロ」になる労災保険は、全ての会員様にとってメリットのある制度です。
その中でも特に、以下の業務に従事する会員様については、万が一の怪我が重大事故につながりやすいため、「既存の保険」だけではリスクが高すぎます。
- 造園(庭木の剪定・伐採)
- 高所作業(雪下ろし・屋根掃除)
こうした方々には、既存の保険に加えて、国の労災保険にも個人的に加入していただき、お互いの保険の弱点を埋めた状態を推奨しています。
センターの事務負担はありません。
「労災保険を導入すると、センターの手続きが増えるのでは?」と心配される必要はありません。
今回ご案内しているのは、「会員様が、個人(一人親方)として任意で加入する」制度です。
- 契約主体: 会員様個人 ⇔ 保険組合
- 保険料支払: 会員様が決済
- 事故対応: 組合がサポート
センター様に行っていただきたいのは、「こういう制度があるよ」と情報提供(紹介)をしていただくことだけです。
安全管理セミナーや配布物でご紹介ください
「剪定中の事故で、治療費が足りなくなった」 そんな悲しい事例を未然に防ぐために、貴センターでも「情報の周知」にご協力いただけないでしょうか。
▼ こんな場面での活用がおすすめです
「入るか入らないかは会員様の自由」ですが、「知らなかったから入れなかった」というのが一番のリスクです。
会員様ご自身とご家族を守るために、ぜひ「国の制度」の周知にご協力をお願いいたします。
まとめ
ここまで、既存の保険と国の労災の違いについて解説してきました。
最後に、センター担当者様にお伝えしたいポイントは3つだけです。
- 既存の保険はやめなくていい
他人への賠償(対人・対物)がついている「団体傷害保険」は、引き続きセンター運営の土台として不可欠です。 - 危険な業務には「国の労災」を足す(既存の保険の弱点を埋める)
剪定、雪下ろしなど。大ケガのリスクがある会員様には、治療費が無制限に出る「労災保険」という選択肢を提示してあげてください。 - センターの事務負担は「ゼロ」
労災の加入手続きや保険料の支払いは、すべて「会員様個人」と私たち「組合」の間で完結します。
センター様は「チラシを渡して紹介するだけ」で、リスク管理が強化できます。
「会員様が事故に遭い、治療費で揉めてしまう」 そんな悲しいトラブルを未然に防ぐために、まずは、「国がやっている、こういう制度があるみたいですよ」と、会員様に情報を手渡してあげることから始めてみませんか?
その一枚のチラシが、会員様の老後の生活と、センターの信頼を守ることにつながります。
時間の経過により内容が変更されている可能性がありますので、ご利用の際は必ず最新の情報をご確認ください。



