シルバー人材センターの「団体傷害保険」と「国の労災」は何が違う?

この記事はこんな方におすすめです

  • 「既存のシルバー保険」と「労災」の違いがよく分からない方
  • 庭木の剪定や雪下ろしなど、危険な業務をする会員が多いシルバー人材センターの方
  • 会員への紹介だけで、シルバー人材センターの手間を増やさずにリスク対策をしたい方

はじめに

こんにちは、フリーランス保険組合です。

「すでにセンターで団体傷害保険に入っているから、これ以上は必要ない」
「国の労災保険と、今の保険。結局なにが違うの?」

日々、会員様の安全管理に尽力されている職員様ほど、このような疑問をお持ちではないでしょうか。
結論から申し上げますと、この2つの保険は「役割」が全く違います。

既存の保険(シルバー保険)
他人への賠償や、軽いケガに強い「守りの基本」

国の労災保険(特別加入)
入院が長引く大ケガや、高額な治療費に強い「万が一の切り札」

どちらか一つを選ぶ必要はありません。
特に、剪定や雪下ろしなどの「危険な業務」を行う会員様にとっては、両方の制度があることが、最強のセーフティネットになります。
この記事では、シルバー人材センターの職員様向けに、「既存の保険と労災の決定的な違い」と、「センターの手間を増やさずに安全体制を強化する方法」を解説します。

そもそも、役割が違います。「お見舞い」か「完全補償」か

「すでにセンターで保険に入っているから、労災なんていらないのでは?」
そう思われる職員の方も多いかもしれません。
しかし、この2つの保険はどちらかが優れているという話ではなく、「守備範囲(役割)」が全く違います。
ズバリ、一言で言うとこうなります。

既存の保険(シルバー団体傷害保険など)
役割: 「他人への賠償」と「軽いケガ」の備え
弱点: 本人の治療費に「上限」がある

国の労災保険(特別加入)
役割: 「本人の大ケガ」の完全補償
弱点: 他人への賠償(対人・対物)は出ない

つまり、「対人・対物はシルバー保険」で守り、「自分の体は労災」で守る。
この2つがあって初めて、完璧な安全体制になります。

「比較表付き」一番の違いは「治療費の上限」と「期限」

もっとも大きな違いは、「治療が長引いたとき(重大事故)」に出ます。
高齢の会員様の場合、骨折などで入院が長引くケースが多いため、ここが最大のリスクになります。

「高齢者の骨折」は、想像以上にお金がかかります
実際に、このようなケースをご存じではないでしょうか?

事例:脚立からの転落による「大腿骨(太ももの骨)」の骨折

  • 手術: ボルトを入れる手術で高額な医療費が発生
  • 入院: 手術前後の入院費
  • リハビリ: 歩けるようになるまで、数ヶ月〜半年以上の通院が必要

これらを合計すると、治療費はあっという間に数十万〜百万円単位になります。

① 既存の保険(シルバー保険など)② 国の労災保険(特別加入)
他人への賠償

(窓を割った等)
◎ 補償あり

(センターにとって必須)
× 補償なし

(対象外)
本人の治療費△ 上限あり

(例:100万円まで)
◎ 全額0円

(上限なし)
補償期間△ 日数制限あり

(例:事故から180日のみ)
◎ 治るまでずっと

(一生涯続く場合も補償)

・ここがポイント!
既存の保険は「180日で打ち切り」などの期限があることが一般的です。
もし、複雑骨折でリハビリが1年以上かかった場合、半年後からは「会員様の自己負担(財布からの持ち出し)」になってしまいます。
これが、会員様が既存の保険に対して不安を持つ原因になります。

「お互いの弱点を埋める!」運用のご提案(センターの手間はゼロです)

もちろん、どのような業務であっても、仕事中の怪我の治療費が「自己負担ゼロ」になる労災保険は、全ての会員様にとってメリットのある制度です。
その中でも特に、以下の業務に従事する会員様については、万が一の怪我が重大事故につながりやすいため、「既存の保険」だけではリスクが高すぎます。

  • 造園(庭木の剪定・伐採)
  • 高所作業(雪下ろし・屋根掃除)

こうした方々には、既存の保険に加えて、国の労災保険にも個人的に加入していただき、お互いの保険の弱点を埋めた状態を推奨しています。
センターの事務負担はありません。
「労災保険を導入すると、センターの手続きが増えるのでは?」と心配される必要はありません。
今回ご案内しているのは、「会員様が、個人(一人親方)として任意で加入する」制度です。

  1. 契約主体: 会員様個人 ⇔ 保険組合
  2. 保険料支払: 会員様が決済
  3. 事故対応: 組合がサポート

センター様に行っていただきたいのは、「こういう制度があるよ」と情報提供(紹介)をしていただくことだけです。

安全管理セミナーや配布物でご紹介ください

「剪定中の事故で、治療費が足りなくなった」 そんな悲しい事例を未然に防ぐために、貴センターでも「情報の周知」にご協力いただけないでしょうか。

▼ こんな場面での活用がおすすめです

  • 安全講習会・セミナーの最後に、チラシを配布する
  • 配分金明細を送る封筒に、案内チラシを同封する
  • 新規会員登録時の説明資料に挟んでおく

「入るか入らないかは会員様の自由」ですが、「知らなかったから入れなかった」というのが一番のリスクです。
会員様ご自身とご家族を守るために、ぜひ「国の制度」の周知にご協力をお願いいたします。

まとめ

ここまで、既存の保険と国の労災の違いについて解説してきました。
最後に、センター担当者様にお伝えしたいポイントは3つだけです。

  1. 既存の保険はやめなくていい
    他人への賠償(対人・対物)がついている「団体傷害保険」は、引き続きセンター運営の土台として不可欠です。
  2. 危険な業務には「国の労災」を足す(既存の保険の弱点を埋める)
    剪定、雪下ろしなど。大ケガのリスクがある会員様には、治療費が無制限に出る「労災保険」という選択肢を提示してあげてください。
  3. センターの事務負担は「ゼロ」
    労災の加入手続きや保険料の支払いは、すべて「会員様個人」と私たち「組合」の間で完結します。
    センター様は「チラシを渡して紹介するだけ」で、リスク管理が強化できます。

「会員様が事故に遭い、治療費で揉めてしまう」 そんな悲しいトラブルを未然に防ぐために、まずは、「国がやっている、こういう制度があるみたいですよ」と、会員様に情報を手渡してあげることから始めてみませんか?

その一枚のチラシが、会員様の老後の生活と、センターの信頼を守ることにつながります。

ご注意:この記事は2025年12月16日時点の情報に基づいて書かれています。
時間の経過により内容が変更されている可能性がありますので、ご利用の際は必ず最新の情報をご確認ください。
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