【訪問美容の発注基準】フリーランス新法に伴う安全管理と労災保険の確認

この記事はこんな方におすすめです

  • 高齢者施設、障害者施設などで「フリーランス美容師」への訪問美容委託を担当している方
  • フリーランス新法に伴う、公募要領や仕様書への記載事項を見直したい方
  • 委託先での事故発生時における、自治体側の「選任・監督責任」や法的なリスクを整理したい方
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はじめに

自治体が運営する高齢者福祉施設や障害者支援施設において、
外部の「フリーランス美容師(訪問美容師)」にカットやカラーなどの業務を委託するケースが増えています。

それに伴い、今、フリーランス美容師の間で「労災保険(特別加入制度)」への申し込みが
急増しているという背景があります。

具体的には、
「2024年11月のフリーランス新法施行を契機に、現場での事故やケガに対するリスク意識が高まり、
従来は対象外だった国の労災保険へ特別加入するフリーランス美容師が急増している」
という事象が起きています。

ハサミなどの刃物や薬剤を扱う特殊な現場だからこそ、これは美容師個人だけの問題ではありません。
万が一、委託先の美容師が施設内で重大な事故やケガに遭った際、
行政側が適切な安全管理や発注プロセスを踏んでいなければ、
自治体側の管理責任(安全配慮義務違反等)が厳しく問われることになります。

本記事では、行政担当者が今知っておくべき法的事実と防衛策を解説します。

なぜ急増?フリーランス美容師の「労災保険への特別加入」が増える背景

これまで、個人事業主であるフリーランスは国の労災保険の対象外であり、
業務中にケガをしても公的な補償を受けられないのが原則でした。

しかし、近年の働き方の多様化に伴い、
美容師を含む特定の職種において「労災保険の特別加入制度」が順次拡大されています。

歴史的には、2021年11月に生活衛生関係営業(美容師・理容師など)の個人事業主に対して
労災保険の特別加入の門戸が開かれました。
そして2024年11月のフリーランス新法施行以降、
行政や民間企業などの発注側からコンプライアンスの一環として
「適切な安全・労働環境の確保」や「公的保険の加入状況の確認」を求められる機会が目立って増えています。

美容師自身も、店舗とは異なる施設等の環境で施術を行うにあたり、
自身のケガや休業リスクに備えるため、急ピッチで特別加入の手続きを進めているという背景があります。

監査視点で整理する「職員」と「フリーランス美容師」の公的補償の違い

行政担当者として契約・監査対策として厳密に把握しておくべき事実は、

直接雇用している職員(労働者)と、業務委託契約を結ぶフリーランス美容師とでは、
業務災害時の公的補償の仕組みが根本的に異なるという点です。

項目施設職員(直接雇用・派遣労働者)フリーランス美容師(業務委託)
適用される主な法律労働基準法、労働契約法など民法(請負・準委任)、
フリーランス新法
業務中のケガへの公的補償労災保険
原則、義務加入により全額補償)
原則として補償なし
特別加入制度への任意加入が必要)
自治体側の主な義務労働基準法に基づく使用者責任、
安全配慮義務
フリーランス新法に基づく取引適正化、適切な就業環境の確保

フリーランス美容師が加入を進めている「労災保険(特別加入)」は、
あくまで美容師本人の就業中のケガや疾病に対して国から給付が行われる仕組みです。
第三者への損害を埋め合わせる「賠償責任保険」とは法的根拠も目的も全く異なるため、
行政の窓口担当者はこれらを混同せず、個別に加入状況を把握する必要があります。

【自治体のリスク】委託先の事故がもたらす行政側の管理責任と報道

「業務委託なのだから、フリーランスが勝手に起こしたケガや事故は自治体には関係ない」という捉え方は、
行政運営上大きなリスクをはらんでいます。

もし福祉施設の動線不備や、施設の設備(床の濡れ、機材の破損など)が原因で
フリーランス美容師が転倒し、重大なケガを負った場合、
自治体側は発注者・施設管理者としての
「安全配慮義務違反(民法)」や「土地の工作物責任(民法717条)」を追及されることになります。

特に、委託先の美容師が労災保険に特別加入していない「完全な無保険」の状態でこうした事故が発生した場合、
被災した事業者への救済スキームが機能せず、問題が長期化・深刻化しやすくなります。

結果として、自治体の施設管理のずさんさが浮き彫りとなり、
「公的施設での安全管理を怠った」として地方紙やニュースで報道され、
地域住民からの社会的信用を著しく失墜させるリスクに直結します。

行政担当者が仕様書・現場管理で今すぐ実践すべき2つの対策

これらのリスクから自治体を守り、内部監査・外部監査にも耐えうる適正な管理を行うために、
行政担当者が明日から実践すべき対策は以下の2点です。

対策1:仕様書・確認書で「公的保険の加入状況」を把握する

今後の業務委託の仕様書や公募条件を作成する際、契約相手の安全網を確認するため、
「労災保険の特別加入制度をはじめとする、就業中の災害に対応する公的・民間の保険への加入状況を把握できる書類(加入証明書等)の提示を求めることができる」といった規定を盛り込んでおくことが有効です。
これにより、行政として法令遵守と安全管理を徹底しているプロセスを立証できます。

対策2:現場での「偽装請負(直接指揮命令)」を徹底的に排除する

フリーランス新法への対応として最も注意すべきは、
自治体の職員が現場のフリーランス美容師に対して、
「〇〇さん、次はこの利用者をカットして」「何時までに全員終わらせて」といった、
直接的な指揮命令を行わないことです。

実態が「指示・命令に基づく労働」とみなされた場合、
業務委託契約であっても法律上は「雇用関係」と同等と判断され、
万が一の事故時に自治体側が「労災保険の未加入事業主」としてのペナルティや、
雇用者としての全責任(100%の補償義務)を直接負うことになります。

指示はあくまで「本日の対象者名簿の提示」など成果物の範囲に留め、
現場の業務遂行プロセスは美容師側に一任してください。

まとめ

フリーランス美容師の間で起きている労災保険(特別加入)への申し込みの動きは、
行政調達における「委託先の就業環境の安全」を見直すべき重要なサインです。

フリーランス新法時代において、発注者である自治体側が「契約相手の適切な公的保険の加入状況」を確認し、
「偽装請負とならない適正な現場管理」を徹底することは、
結果として施設利用者様の安心、そして自治体自身の社会的信用を守る最大の防衛策となります。

今一度、現在の福祉施設における訪問美容の委託要件や、現場での運用の見直しを進めてみてはいかがでしょうか。

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