フリーランス新法「施行1年」!就業環境整備、対応できていますか?

この記事はこんな方におすすめです

  • フリーランスとして働く上で、発注者との取引やハラスメントなどの不安を抱えている方
  • フリーランスとして開業したばかりで、新しい法律について知りたい方
  • 労災保険やトラブル相談など、フリーランスの保険や安心のための制度に関心がある方

はじめに

毎日フリーランスの方から、労災保険加入のご相談を受けています。私たちは日々のご相談の中で、フリーランスの皆さまが「仕事中のケガや病気」だけでなく、「発注者とのトラブルやハラスメント」といった、精神的・経済的な不安も抱えていることを痛感しています。

そんなフリーランスの皆さまの安心を守るために、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(以下「フリーランス新法」)が、2024年(令和6年)11月1日に施行されてから、1年を迎えました!

この法律は、フリーランスと発注事業者との間の取引を適正化し、私たちが安心して働ける就業環境を整備するために作られた、非常に重要な法律です。

「フリーランス新法って難しそう…」と敬遠されていた方、読解力が低いと感じる方でも大丈夫です。この記事では、特にフリーランスの皆さまにとって大切な「就業環境整備」のポイントを中心に、わかりやすい文章で解説していきます。

法が施行されてから1年が経ち、今、発注事業者の就業環境整備への対応状況が問われています。私たちフリーランスが、自分の権利を守り、安心して働き続けるための知識を、一緒に確認していきましょう!

フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)ができた目的とは?

フリーランス新法は、多種多様な業界で活躍するフリーランスの皆さまが、不利な立場に置かれることなく、安定して業務に取り組める環境を国として整備するために制定されました。

目的は大きく分けて2つあります。

1.取引の適正化(発注事業者による義務と禁止行為)
・発注事業者がフリーランスに業務を委託する際、取引条件を必ず書面などで明示することや、不当な報酬の減額、受領拒否、不当な返品、一方的なキャンセルなどを禁止することで、フリーランスを守ります。

・報酬の支払期日についても、給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り早い日を定める義務があります。

2.就業環境の整備(ハラスメント対策や育児・介護への配慮)
・フリーランスがハラスメントを受けたり、育児や介護と両立したりする際に、会社員と同様に安心できる環境づくりを、発注事業者に求めます。

この法律が施行されて1年が経ち、発注事業者は法律に沿った体制づくりを継続できているかが問われています。私たちフリーランスも、法律を知ることで、不安なことがあった時に「これは法律で認められた権利だ」と自信を持って相談できるようになります。

フリーランス新法が適用される「どんな人」の範囲を確認!

このフリーランス新法が適用される「フリーランス」とは、一般的にイメージされるフリーランスよりも、法律上は限定された範囲になります。

●特定受託事業者(フリーランス)
・従業員を使用しない個人または法人(役員が1名のみ)で、業務委託の相手方である事業者。

●業務委託事業者(発注事業者)
・従業員を使用する事業者で、フリーランスに業務を委託する事業者。

例えば、30代から50代のウェブデザイナーやライター、コンサルタントの方で、従業員を雇わずに、企業(従業員を使用している)から業務委託を受けている方は、この法律の対象となります。

逆に、「従業員を使用しているフリーランス」や「消費者を相手に取引をしているフリーランス」は、この法律の直接の適用対象外となるので注意が必要です。

施行1年で特に重要!発注事業者に義務付けられる就業環境整備の2つのポイント

フリーランス新法が施行されて1年が経過し、厚生労働省が特に力を入れているのが「就業環境の整備」に関する義務です。これらは、フリーランスが安心して働ける心理的な安全を確保するために非常に重要です。

(1) ハラスメント対策に係る体制整備の義務(法第14条)
発注事業者は、フリーランスがハラスメントによって就業環境を害されることがないよう、以下の措置を講じる義務があります。

・方針の明確化と周知・啓発:ハラスメントを行ってはならないという方針を明確にし、フリーランスを含む関係者にしっかりと知らせること。

・相談体制の整備:ハラスメントに関する**相談(苦情を含む)**に対応し、適切に対処できる体制を整えること。

・事後の迅速かつ適切な対応:実際にハラスメントが発生した場合は、迅速に対応し、再発防止策を講じること。

・プライバシーの保護:相談者や行為者のプライバシーを保護し、不利益な取り扱いをしないこと。

(2) 育児・介護等に関する配慮の義務(法第13条)
フリーランスが妊娠、出産、育児、介護といったライフイベントと仕事を両立できるよう、発注事業者は必要な配慮をしなければなりません。

これは、フリーランスが「労働者」ではないため、育児・介護休業法などの適用がない現状を踏まえて設けられた、フリーランスの働き方を尊重するための大切なルールです。

例えば、育児や介護を理由にフリーランスから業務遂行について相談があった場合、発注事業者は柔軟に対応するよう努める必要があります。

もしフリーランス新法に違反するトラブルがあったら?相談先のご案内

フリーランス新法に違反するようなトラブル(報酬の不払い、一方的なキャンセル、ハラスメントなど)に遭ってしまった場合、一人で悩まず、すぐに相談できる窓口があります。

相談したい内容主な相談先
フリーランス労災保険についてフリーランス保険組合
取引の適正化(取引条件の明示、報酬の支払いなど)について公正取引委員会 または 中小企業庁
就業環境の整備(ハラスメント対策、育児・介護への配慮など)について厚生労働省(都道府県労働局)
発注事業者とのトラブル全般について(弁護士によるアドバイス、和解あっせんなど)フリーランス・トラブル110番(厚生労働省委託事業
働き方の実態から、自分は「労働者」ではないかと不安な場合都道府県労働局、または労働基準監督署

特に「フリーランス・トラブル110番」では、弁護士が無料でワンストップで相談に応じてくれ、トラブル解決のための具体的なアドバイスや、和解あっせんといった紛争解決の手続きのサポートが受けられます。
不安を感じたら、まずはこれらの窓口に相談することが、安心への第一歩です。

フリーランスの安心を支えるもう一つの柱:労災保険特別加入

フリーランス・事業者間取引適正化等法が就業環境や取引の公正を守る法律だとすれば、フリーランスの安心を支えるもう一つの大切な制度が、「労災保険の特別加入」です。

フリーランス新法が施行されたのと同じ2024年11月1日から、特定フリーランス事業として、業種を問わず多くのフリーランスが国の労災保険に特別加入できるようになりました。

毎日フリーランスの方から、労災保険加入のご相談を受けていますが、フリーランス新法による就業環境整備と、労災保険による身体的な補償は、フリーランスの不安を解消する「車の両輪」のようなものです。

●労災保険特別加入のメリット

・仕事中や通勤中のケガや病気の治療費が原則無料になります。

・ケガや病気で仕事ができなくなった場合、休業補償(給付基礎日額の約8割)が受け取れます。

フリーランス保険組合は、この労災保険の特別加入団体として、フリーランスの皆さまが簡単かつ確実に労災保険に特別加入できるようサポートしています。新しい法律の知識と、もしもの時の補償を両方手に入れて、安心して活動を続けましょう。

11月30日まで広報を強化中!:法律を詳しく知るための情報源

厚生労働省は、フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行1年に合わせて、11月30日まで広報を強化しています。

この法律を詳しく知りたい方や、発注事業者として就業環境整備の対応を確認したい方は、厚生労働省や公正取引委員会のウェブサイトで、最新の情報を確認できます。

フリーランス・事業者間取引適正化等法を詳しく知りたい方へ
厚生労働省HP:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/bunya/freelance_00006.html

フリーランスの皆さまが、不安なく、そして公正な環境で仕事に取り組めるよう、私たちフリーランス保険組合も、引き続きサポートを続けてまいります。

ご注意:この記事は2025年11月4日時点の情報に基づいて書かれています。
時間の経過により内容が変更されている可能性がありますので、ご利用の際は必ず最新の情報をご確認ください。
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