ハチ駆除委託の死角!フリーランス労災未加入で役所が負うリスク

この記事はこんな方におすすめです

  • 「予算がないから」「すぐ動けるから」と、ハチ駆除を地域の個人事業主や便利屋に頼んでいる方
  • シルバー人材センターやフリーランスの作業員が現場で大怪我をした際、役所の責任がどうなるか不安な方
  • フリーランス新法を遵守しつつ、事故時の「全責任を役所が押し付けられる事態」を防ぎたい方
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はじめに

6月から8月にかけて、アシナガバチやスズメバチの巣は一気に巨大化し、
役所には住民から「早く駆除してくれ」とクレーム混じりの要望が殺到します。

焦った施設管理や物品調達の担当者様が、
地元の個人事業主(フリーランス)や便利屋などに「予算の範囲内で、大至急お願い!」と
駆け込みで委託するケースは珍しくありません。

しかし、ここに行政を揺るがす巨大なコンプライアンスの死角があります。
それが「作業員の労災保険」です。

「プロに任せたから安心」は通用しません。
原則として労働者ではないフリーランスは、国の労災保険の対象外です。
もし防護服を着た作業員が猛暑のなかハチに襲われ、
アナフィラキシーショックや足場からの転落で重篤な状態になったらどうなるか?

労災が下りないフリーランスやその遺族の矛先は、発注者である「役所」へ向きます。
一歩間違えれば、自治体が「偽装請負」や「安全配慮義務違反」の引き金を引いていたという、
恐ろしいシナリオの境界線を解説します。

6〜8月急増:行政担当者を焦らせるハチ駆除と現場の命がけのリスク

夏場のハチ駆除は、Web上の見積もりサイトで見るような手軽な作業ではありません。
7月・8月のスズメバチは凶暴性がピークに達しており、巣を刺激されたハチは防護服の隙間すら狙ってきます。

さらに現場を過酷にするのが「猛暑」です。
厚手の防護服を着用しての高所作業は熱中症のリスクが極めて高く、
意識朦朧となってハシゴから転落する二次災害も後を絶ちません。

こうした命がけの現場を個人に委託する際、
担当者が「作業員個人の身の安全(労災)」まで頭が回っていないケースが、
今もっとも危険視されています。

【最新の法事実】フリーランスも労災に入れる!新・特別加入制度の仕組み

知っておかなければならない厳然たる法的事実は、
「個人事業主(フリーランス)には、原則として国の労災保険(労働者災害補償保険)は適用されない」
ということです。


彼らは労働基準法上の「労働者」ではないからです。

しかし、これではあまりに危険なため、大きな法改正がありました。

フリーランス新法の施行(2024年11月)に伴い、
国の労災保険の「特別加入制度」が大幅に拡大され、
ハチ駆除を含む害虫・害獣駆除のフリーランスも正式に国の労災保険へ特別加入できるようになりました。

新・労災保険の特別加入制度とは
労働者ではない個人事業主(特定受託事業者など)であっても、
任意で国の労災保険に特別加入することで、
業務災害時に労働者と同等の医療給付(自己負担ゼロ)や手厚い休業補償を国から受けられる制度。

つまり、現在の法制度下において、ハチ駆除を請け負うフリーランス側にも
「国の労災に加入する手段」がしっかりと用意されています。
だからこそ行政がフリーランスに発注する際は、
その事業者が「特定受託事業者(フリーランス)としての労災保険特別加入」を済ませているかを
確認することが、自治体側のリスクを抑える最大の防衛策となるのです。

【比較表】ハチ駆除の外注先パターン別:労災適用と自治体のリスク度

「どこに、どうやって頼むか」で、万が一の事故時に役所が巻き込まれるリスクの度合いはこれだけ変わります。

発注先と契約形態作業員の労災適用事故発生時に自治体が負うリスク担当者が取るべき
コンプラ防衛策
専門の法人企業
(請負契約)
◯
適用される
(その法人の労災保険)
極めて低い
(法人の労災で処理される)
業者の労働保険(労災・雇用)の加入状況を確認する。
フリーランス
(特別加入あり)
◯
適用される
(個人の特別加入)
低い
(特別加入の労災から給付)
発注時に最新の
「労災保険特別加入証明書」の写しを提出させる。
フリーランス
(未加入)
✕
適用されない
【最大】
(役所へ直接、巨額の損害賠償が請求される恐れ)
仕様書に「特別加入必須」を明記。ない場合は民間傷害保険等を確認。
シルバー人材センター
(会員への配分)
✕
適用されない
(※会員は労働者ではない)
【中〜大】
(役所の指示実態次第で、直接の使用者責任へ)
現場での直接指示を厳禁とし、センター独自の「シルバー保険」を確認。

良かれと思った「その指示」が命取り!役所が法的責任を問われる2つの瞬間

労災保険に未加入のフリーランスやシルバー人材の会員が現場で重傷を負った場合、
国からの補償が出ないため、問題は一気に「役所の過失責任」へとシフトします。
特に以下の2つのポイントで、行政担当者は法律上の罠に落ちます。

① 「あそこもついでにやっといて」が引き起こす『偽装請負』

現場に立ち会った担当職員が、親切心や焦りから「あっちの木にも巣があるから、ついでに取って」「危ないから裏口から回って作業して」などと現場で直接指示を出してしまうケースです。 これは法律上、請負ではなく「実態としての指揮命令(労働者性)」があったとみなされます。労働基準監督署から「実態は役所の労働者だ(偽装請負)」と認定されれば、労災未加入のペナルティや、労働基準法違反の責任を自治体がダイレクトに背負うことになります。

② 請負契約でも逃げられない『安全配慮義務違反』

「現場への指示は一切していないから、うちは請負として関係ない」と言い切ることもできません。最高裁の判例では、実質的な使用関係や施設・情報の提供関係がある場合、注文主(自治体)にも安全配慮義務(民法第415条など)が発生するとされています。

  • 「過去にその場所で職員がハチに激しく威嚇された」という危険情報を事前に伝えていなかった
  • 役所側が指定した足場や動線に、元々危険な欠陥があった

このような場合、「労災が使えないフリーランス」側から、安全配慮義務違反を理由とした数千万円規模の民事上の損害賠償請求が自治体に直接突きつけられることになります。

まとめ

「急ぎだから」「予算が安いから」という理由だけで、
労災のセーフティネットを持たないフリーランスにハチ駆除を丸投げすることは、
自治体にとってあまりに高リスクです。

これからの夏の陣を乗り切るために、行政の発注担当者様は、
仕様書や発注手続きに以下の「2つの防衛策」を必ず組み込んでください。

  1. 契約前に「労災保険の特別加入証明書」の写しを提出させること。
  2. 現場では仕様書通りの成果だけを求め、
    役所側からは一切の「作業指示・ルート指定」を行わないこと。

国がフリーランス向けの労災特別加入を開放した今だからこそ、
「加入しているプロを選ぶ」こと、そして「適切な距離感を保つ」というコンプライアンスの徹底が、
自治体を守る唯一の正攻法です。

フリーランスの特別加入を促す案内方法や、企業としてのリスク対策についてご不明な点がございましたら、
どうぞお気軽にメール窓口までご連絡ください。

ご注意:この記事は2026年7月10日時点の情報に基づいて書かれています。
時間の経過により内容が変更されている可能性がありますので、ご利用の際は必ず最新の情報をご確認ください。