公開日:2026年9月3日
最終更新日:2026年9月3日

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はじめに
2026年9月2日、公正取引委員会は、フリーランスへ研修や配達などの業務を委託していた大手物流企業に対し、フリーランス法に基づく勧告を行いました。
今回問題となったのは、「取引条件の明示」と「報酬の支払期日」という、発注時の基本的なルールです。
この記事では、今回のニュースをもとに、フリーランス本人と発注する企業の双方が確認したいポイントを分かりやすく解説します。
今回のフリーランス法違反では何が問題になった?
公正取引委員会によると、今回勧告を受けた事業者は、研修の実施や荷物の配達などを多数のフリーランスへ委託していました。
対象となった期間は、2024年11月1日から2025年6月30日までです。
問題とされたのは、大きく次の2点です。
- 167名のフリーランスに対し、業務委託時に必要な取引条件の全部または一部を、直ちに書面または電磁的方法で明示していなかったこと
- 140名のフリーランスに対し、報酬の支払期日を定めておらず、法律上求められる時点までに報酬を支払っていなかったこと
違反法条は、取引条件の明示について第3条第1項、報酬の支払いについて第4条第5項です。
今回のポイントは、「報酬を不当に安くした」といった問題だけではありません。発注するときの条件の伝え方や、支払日の決め方という基本的な手続きもフリーランス法の対象です。
公正取引委員会は、今後フリーランスへ業務を委託する際には、必要な取引条件を直ちに明示することや、法律に沿って定められた支払期日までに報酬を支払うことなどを求めています。
フリーランスへの「取引条件の明示」とは?
フリーランスへ業務を委託した場合、発注事業者は業務委託をした時点で、直ちに取引条件を明示する必要があります。
法律の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。一般には「フリーランス法」や「フリーランス・事業者間取引適正化等法」と呼ばれています。
公正取引委員会の資料では、主に次の内容を明示することが求められています。
- 発注事業者とフリーランスの名称
- 業務委託をした日
- 依頼する業務の内容
- 納品日や役務を提供する日
- 納品場所や役務を提供する場所
- 検査を行う場合の検査完了期日
- 報酬の額と支払期日
- 金銭以外で報酬を支払う場合に必要となる支払方法に関する事項
口頭で伝えるだけでは足りない
取引条件は、書面または電磁的方法で明示します。
電磁的方法には、メールやSNSのメッセージなどが含まれます。
一方、口頭で条件を伝えるだけでは、フリーランス法上の取引条件の明示とは認められません。
契約書があれば必ず大丈夫とは限らない
業務委託契約書を作成している場合でも注意が必要です。
公正取引委員会は、契約書を締結していても、必要な明示事項がすべて記載されていなければ、取引条件の明示としては不十分と説明しています。
「契約書があるか」だけではなく、「必要な条件が具体的に書かれているか」を確認することが大切です。
報酬の支払期日はいつまでに決める?
フリーランスへの報酬は、原則として、発注した物品などを受領した日や役務の提供を受けた日から60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定め、その期日までに支払う必要があります。
例えば役務の提供を委託している場合は、原則として、フリーランスから個々の役務の提供を受けた日が起算日になります。
支払日は具体的に分かるようにする
支払期日は、具体的な日を特定できる形で決める必要があります。
例えば「9月30日支払」や「毎月末日締切、翌月末日支払」のように、実際の支払日が分かる表現です。
一方、「翌月10日まで」「納品後60日以内」のように、支払いの期限だけを示す表現では、具体的な支払期日を定めたことにならない場合があります。
請求書が届いていなくても注意
「フリーランスから請求書が届かなかったから支払いが遅れた」という場合も注意が必要です。
公正取引委員会は、請求書が提出されていなくても、あらかじめ定めた支払期日までに報酬を支払う必要があると案内しています。
再委託の場合には例外がある
元委託者から受けた業務をフリーランスへ再委託する場合には、一定の条件を満たすことで支払期日の特例があります。
再委託であること、元委託者の名称、元委託業務の対価の支払期日などを明示した場合は、元委託業務の支払期日から30日以内のできる限り短い期間内で、フリーランスへの支払期日を設定できます。
取引条件と支払期日の違反は以前から多い?
今回だけの問題ではありません。
公正取引委員会が公表した2025年度の運用状況では、フリーランス法に基づく勧告は10件ありました。
| 違反行為 | 2025年度の勧告で確認された件数 |
|---|---|
| 取引条件の明示義務違反 | 10件 |
| 期日における報酬支払義務違反 | 9件 |
| 報酬の減額 | 1件 |
| 不当な経済上の利益の提供要請 | 1件 |
1件の勧告で複数の違反が認定されることがあるため、各違反の件数を合計しても勧告件数とは一致しません。
それでも、取引条件の明示義務は10件すべて、報酬支払義務は10件中9件で確認されています。
「条件を明示する」「支払日を決めて期日までに支払う」という基本的なルールほど、改めて確認する必要があります。
なぜ基本的なルールでも確認漏れが起こる?
今回の勧告資料だけから、違反が起きた具体的な原因までは判断できません。
ただし、フリーランスとの取引では、発注、契約、業務管理、請求、支払いなどを別々の担当者が行うケースがあります。
その場合、契約書には報酬額があるものの支払日がない、発注内容を電話だけで追加した、請求書の到着を支払いの起点だと考えていた、といった確認漏れにつながる可能性があります。
大切なのは、企業規模にかかわらず「当然できているはず」と考えず、実際の発注から支払いまでの流れを確認することです。
フリーランス本人は何を確認すればいい?
フリーランスとして仕事を受けている方は、新しい仕事を始めるときに、次の内容を確認してみましょう。
- 仕事内容が具体的に書かれているか
- いつ、どこで仕事をするのか分かるか
- 報酬はいくらなのか
- 報酬の支払日が具体的に決まっているか
- 契約書、発注書、メール、メッセージなど記録が残る形で条件を確認できるか
特に注意したいのが、仕事を始めてから条件が変わった場合です。
追加の仕事を頼まれたときや報酬が変更されたときは、口頭だけで終わらせず、メールやメッセージなどでも内容を確認しておくと、後から取引内容を確認しやすくなります。
「いくらもらえるのか」「いつ支払われるのか」が書類やメールを見ても分からない場合は、仕事を受ける時点で発注者へ確認しておきましょう。
フリーランスへ発注する企業は何を確認すればいい?
企業側では、契約書を作成しているかどうかだけではなく、実際の発注方法まで確認することが重要です。
- 業務委託時に必要な取引条件を明示しているか
- 書面、メール、SNSのメッセージなど記録が残る方法で明示しているか
- 報酬の支払期日を具体的に定めているか
- 受領日や役務提供日から60日以内のできる限り短い期間になっているか
- 決めた支払期日までに実際に支払われているか
- 追加発注や条件変更についても記録が残っているか
発注担当者と経理担当者が異なる場合には、契約上の支払期日と実際の支払処理が一致しているかも確認しておきたいところです。
まとめ
- 2026年9月2日の勧告では、取引条件の明示義務と報酬支払義務の違反が問題となりました。
- フリーランスへの発注では、必要な取引条件を直ちに書面やメール等で明示し、報酬の支払期日を具体的に定める必要があります。
- フリーランス本人も企業側も、契約書の有無だけでなく「仕事内容・報酬額・支払日まで具体的に確認できるか」をチェックしましょう。
公的な参考資料

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