公開日:2026年10月23日
最終更新日:2026年10月23日

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はじめに
大型船の離着岸を支えたり、台船を引っ張ったりするタグボート(曳船)。港や海上での作業に欠かせない船です。
タグボートでは、船の操縦や係船ロープの取扱いなど、さまざまな作業が行われています。
こうした仕事をフリーランスや個人事業主として行っている方の中には、「自分も国の労災保険に加入できるの?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。
実は、タグボートの船員が労災保険に特別加入できるかは、船の大きさや航行する場所などによって異なります。
特に重要なのは、港内だけを航行するタグボートなのか、港の外でも航行するタグボートなのかという違いです。
この記事では、タグボートの仕事内容と労災保険の加入条件、仕事中のケガに対する補償について解説します。
タグボートの船員も労災保険に特別加入できる?
タグボートで働く一人親方・個人事業主も、一定の条件を満たせば国の労災保険に特別加入できます。
労災保険は、通常、会社に雇用されている労働者を対象とする制度です。
一方、独立して事業を行う方についても、国が定めた条件を満たすことで加入できる「特別加入制度」があります。
船員の一人親方等の特別加入では、船員法第1条に規定する船員が行う事業に該当するかが重要です。
タグボートの場合も、船員法の対象となる船舶に乗り組んで業務を行っているかなどを確認します。
ただし、タグボートで働いていれば誰でも加入できるわけではありません。
港内のみを航行する船舶など、船員法の対象から除外される船舶もあるため、注意が必要です。
港内のタグボートと港外のタグボートでは加入条件が違う?
タグボートの労災保険を考えるうえで、特に確認したいのが航行区域です。
船員法第1条では、総トン数5トン未満の船舶や、湖・川・港のみを航行する船舶などは、原則として対象から除かれています。
そのため、タグボートの仕事をしていても、船舶の航行区域によって加入できる区分が異なります。
① 港内のみを航行するタグボート
港内で大型船の離着岸を補助するタグボートがあります。
例えば、港に入ってきた大型貨物船を岸壁まで誘導したり、出港する船の方向転換を補助したりする仕事です。
このように、港の区域内だけを航行する船舶は、原則として船員法第1条の対象外となります。
そのため、港内のみを航行するタグボートでは、船員の一人親方等の特別加入の対象にならない場合があります。
なお、港内作業に従事する方が労災保険による補償を一切受けられないという意味ではありません。
雇用関係がある場合は、通常の労災保険の対象となる可能性があります。
② 港の外を航行するタグボート
一方、港の外まで航行し、台船を曳航したり、大型船の移動を支援したりするタグボートもあります。
このような船舶では、船の総トン数や実際の航行区域などの条件を満たせば、船員の特別加入の対象となる可能性があります。
例えば、総トン数5トン以上で、船員法の対象となる海域を航行するタグボートに乗り組み、独立して船員の業務を行っている場合です。
ただし、港の外へ出ることがあるというだけで、必ず加入できるわけではありません。
船舶の種類や航行区域、契約関係などを確認したうえで判断されます。
| タグボートの種類 | 船員の特別加入 |
|---|---|
| 港内のみを航行するタグボート | 原則として対象外 |
| 港外も航行するタグボート | 条件を満たせば対象となる可能性あり |
| 総トン数5トン未満のタグボート | 原則として対象外 |
上記は船員法の適用範囲に基づく一般的な整理です。実際の加入可否は、個別の状況によって異なります。
タグボートの船員はどんな仕事をしている?
タグボートでは、大型船の運航を支えるために、さまざまな作業を行います。
代表的な仕事内容を紹介します。
① 大型船の離着岸支援
タグボートの代表的な仕事が、大型船の離着岸を補助する作業です。
大型の貨物船やタンカーは、小回りが利きにくいため、港での方向転換や岸壁への接近にタグボートの力を借りることがあります。
タグボートは、大型船を押したり引いたりしながら、安全な離着岸を支えます。
② 台船などの曳航作業
自力で航行できない台船などを、ロープで引っ張って移動させる仕事です。
台船には、建設資材や大型の設備などが積まれている場合があります。
曳航中は、海の状況や船同士の位置関係に注意しながら運航します。
③ 係船ロープの取扱い
タグボートでは、曳航や離着岸支援の際に、ロープの接続や取り外しなどを行います。
ロープには大きな力がかかるため、取扱いを誤ると重大な事故につながるおそれがあります。
作業時には、ロープの状態や周囲の安全確認が欠かせません。
④ 船内設備の点検・保守
タグボートの船内では、エンジンやウインチなどの設備を点検する作業もあります。
機械の運転状況を確認したり、日常的な整備を行ったりして、安全な運航を支えます。
ただし、船員として行う船内の点検・保守と、別事業として請け負う船舶修理工事などでは、労災保険上の取扱いが異なる可能性があります。
タグボートの仕事で起こり得る労災事故とは?
タグボートの仕事には、船体の揺れや大型船との接近、ロープにかかる強い力など、特有の危険があります。
例えば、次のような事故が考えられます。
- 係船ロープの取扱い中に手や足を挟まれる
- 濡れた甲板で滑って転倒する
- 船体が揺れた際に設備へ体をぶつける
- ウインチなどの機械に巻き込まれる
- 船内の階段や通路で足を踏み外す
これらは事故の例です。実際に労災保険の対象となるかは、加入区分や事故の状況、業務との関係などによって判断されます。
事故を防ぐための安全対策とともに、万が一のケガに備えることも大切です。
タグボートの船員が労災保険で受けられる補償
船員の労災保険に特別加入している場合、仕事中の事故などについて、所定の要件を満たせば国から給付を受けられます。
主な補償は次のとおりです。
| 補償の種類 | 内容 |
|---|---|
| 療養(補償)等給付 | 仕事中のケガや病気の治療に必要な給付 |
| 休業(補償)等給付 | 療養のため働けない期間の給付 |
| 障害(補償)等給付 | 一定の障害が残った場合の給付 |
| 遺族(補償)等給付 | 仕事が原因で亡くなった場合の遺族への給付 |
仕事中のケガに対する治療費
例えば、曳航作業中に転倒して骨折した場合などです。
仕事が原因のケガとして認められた場合、必要な治療について労災保険から給付を受けられます。
労災指定医療機関では、所定の手続きによって原則として窓口負担なしで治療を受けられます。
働けなくなった場合の休業補償
ケガの療養によって仕事ができなくなった場合、所定の要件を満たせば休業補償を受けられます。
休業補償は原則として休業4日目から支給され、給付基礎日額の80%相当が支給されます。
ただし、特別加入者の場合は、療養のため対象となる業務を全く行えない状態であることなどが必要です。
仕事中のケガで長期間働けなくなった場合に備えられることは、労災保険の大きな特徴です。
タグボートの船員が加入前に確認したい3つのこと
① 船舶の総トン数と航行区域
まずは、乗り組んでいるタグボートの総トン数と、どこを航行する船なのか確認しましょう。
特に、港内のみを航行する船舶かどうかは、船員法の適用を判断する重要なポイントです。
港の外でも航行する場合は、実際の航行区域や船舶の運用状況も確認しておきましょう。
② 船会社との契約関係
船会社などに雇用されている場合は、原則として通常の労災保険の対象となります。
一方、独立して仕事を請け負っている場合は、一人親方等の特別加入を検討することになります。
ただし、契約書に「業務委託」と書かれていても、実際の働き方によっては雇用関係が認められる場合があります。
契約の名称だけでなく、実際の働き方を確認しましょう。
③ 従業員を雇用しているか
船員の一人親方等の特別加入では、従業員を常時使用していないことが基本です。
臨時的に船員を雇用している場合は、年間の雇用日数などによって取扱いが異なります。
年間100日以上船員を使用する場合は、中小事業主等の特別加入に該当することがあります。
加入を検討する際は、雇用状況も含めて確認しておきましょう。
まとめ|タグボートの種類と働き方を確認しよう
タグボートで働く一人親方・個人事業主も、一定の条件を満たせば国の労災保険に特別加入できます。
ただし、港内のみを航行するタグボートは、原則として船員法の対象外です。
一方、港の外を航行するタグボートでは、船舶の総トン数や仕事内容、働き方などによって加入対象となる可能性があります。
タグボートの仕事では、係船ロープの取扱いや曳航作業など、ケガにつながる危険があります。
まずは自分が乗り組んでいるタグボートの航行区域と仕事内容を確認し、加入できる労災保険を検討しましょう。
船員フリーランスの労災保険については、以下のページをご確認ください。

公的な参考資料
e-Gov法令検索「船員法 第1条」
厚生労働省「特別加入手続きのご案内」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousai/dl/100428-1c_0001.pdf
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