公開日:2026年10月23日
最終更新日:2026年10月23日

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はじめに
船の上では、波による揺れや濡れた甲板、狭い通路など、陸上とは異なる環境で仕事をします。
普段は慣れている作業でも、ちょっとした油断が大きな事故につながることがあります。
特に注意したいのが、転倒・転落・機械へのはさまれや巻き込まれ事故です。
国土交通省の資料によると、2024年度の船員の死傷災害では、転倒が119人、はさまれが76人、転落・墜落が52人、巻き込まれが29人報告されています。
船内での事故は、骨折や重いケガにつながり、長期間仕事ができなくなるおそれがあります。
この記事では、船員に多い事故の種類や防止策、仕事中にケガをした場合の労災保険の補償について解説します。
船員に多い事故は?国土交通省のデータを紹介
国土交通省の「2026年度船員災害防止実施計画」には、2024年度に発生した船員の死傷災害の状況がまとめられています。
事故の種類別に見ると、次のようになっています。
| 事故の種類 | 死傷者数 | 割合 |
|---|---|---|
| 転倒 | 119人 | 25% |
| はさまれ | 76人 | 16% |
| 動作の反動・無理な動作 | 53人 | 11% |
| 転落・墜落 | 52人 | 11% |
| 巻き込まれ | 29人 | 6% |
転倒、はさまれ、無理な動作、転落・墜落の4種類で、死傷災害全体の約63%を占めています。
また、死亡・行方不明につながった事故では、海中転落が大きな割合を占めています。
こうしたデータからも、船内の足元や機械設備、海への転落に対する安全対策が重要であることがわかります。
船内で起こりやすい事故① 濡れた甲板での転倒
船内で特に多いのが転倒事故です。
甲板は雨や波しぶきで濡れやすく、油や汚れが付着していると滑りやすくなります。
また、船体が揺れることでバランスを崩し、転倒することもあります。
転倒事故の例
- 雨で濡れた甲板を歩いていて滑る
- 船体が揺れた際にバランスを崩す
- 床に置かれたロープや工具につまずく
- 油が付着した機関室の床で転倒する
転倒によって手首や足を骨折すると、しばらく乗船できなくなる場合もあります。
転倒を防ぐためのポイント
- 滑りにくい安全靴を使用する
- 床の水や油をこまめに取り除く
- ロープや工具を通路に放置しない
- 船体が揺れているときは手すりを使う
慣れた場所でも、足元の状態を確認してから移動することが大切です。
船内で起こりやすい事故② 階段や高所からの転落
船内には、急な階段や段差、高い場所での作業など、転落につながる場所があります。
特に船体が揺れているときは、普段よりも姿勢が不安定になりやすいため注意が必要です。
転落事故の例
- 船内階段で足を踏み外す
- 船体の清掃や塗装中に高所から落ちる
- 船舶間の移動中に足を滑らせる
- 甲板上の開口部から転落する
高い場所からの転落では、骨折だけでなく、頭部や背骨を負傷するおそれもあります。
転落を防ぐためのポイント
- 階段の昇り降りでは手すりを使う
- 高所作業では適切な墜落制止用器具を使用する
- 開口部にはふたや転落防止措置を設ける
- 波や風が強いときは作業方法を見直す
作業を急ぐよりも、安全な足場や作業環境を確保することが重要です。
船内で起こりやすい事故③ 機械へのはさまれ・巻き込まれ
船内では、ウインチやエンジン、ポンプなど、さまざまな機械設備を使用します。
こうした設備の運転中や点検中には、手や衣服が機械に巻き込まれたり、部品の間に挟まれたりする危険があります。
機械事故の例
- ウインチの操作中に手を挟まれる
- 回転する機械に衣服が巻き込まれる
- エンジンの点検中に可動部分へ接触する
- 係船ロープと設備の間に手や足を挟まれる
機械へのはさまれ・巻き込まれ事故は、指や手足の重いケガにつながることがあります。
機械事故を防ぐためのポイント
- 点検や清掃の前に機械を停止し、誤作動を防ぐ
- 回転部分の安全カバーを取り外したまま運転しない
- ロープや機械の可動範囲に不用意に入らない
- 作業前に手順や合図を確認する
特に複数人で作業する場合は、機械を動かす人と周囲で作業する人が、お互いの動きを確認することが大切です。
海中転落にも注意!命に関わる事故を防ぐには
船内での事故の中でも、特に注意したいのが海中への転落です。
国土交通省の2024年度の統計では、船員の死亡・行方不明事故14人のうち、海中転落によるものが5人でした。
海中転落は、転落した際の衝撃だけでなく、溺水や低体温など、命に関わる危険があります。
事故を防ぐためには、次のような対策が重要です。
- 作業内容に合った救命胴衣を着用する
- 船べりや甲板の端での作業に注意する
- 悪天候時は作業の実施方法を見直す
- 転落時の救助方法や連絡体制を確認する
救命胴衣の着用だけでなく、転落しないための設備や作業手順を整えることも欠かせません。
船内でケガをした場合、労災保険では何が補償される?
船員の一人親方・個人事業主も、条件を満たして国の労災保険に特別加入していれば、仕事中の事故などについて給付を受けられる場合があります。
主な補償は次のとおりです。
| 補償の種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 療養(補償)等給付 | 仕事が原因のケガや病気の治療に必要な給付 |
| 休業(補償)等給付 | 療養のため働けない場合の給付 |
| 障害(補償)等給付 | 一定の障害が残った場合の年金や一時金 |
| 遺族(補償)等給付 | 仕事が原因で亡くなった場合の遺族への給付 |
治療費の補償
例えば、甲板で転倒して骨折した場合などです。
仕事が原因のケガとして認められれば、必要な治療について労災保険から給付を受けられます。
労災指定医療機関では、所定の手続きによって原則として窓口負担なしで治療を受けられます。
働けなくなった場合の休業補償
ケガの療養によって仕事ができなくなった場合は、休業補償の対象となることがあります。
原則として休業4日目から、給付基礎日額の80%相当が支給されます。
ただし、特別加入者の場合は、療養のため対象業務を全く行えない状態であることなどが必要です。
単に乗船予定がなくなった場合や、仕事の依頼が減った場合は対象になりません。
労災保険は、治療費だけでなく、ケガによって働けなくなった期間の生活にも備えられる制度です。
船内で事故が起きたら、まず何をすればいい?
船内で事故が起きた場合は、まず負傷者の安全確保と必要な救急対応を優先しましょう。
そのうえで、事故の状況を記録し、必要な連絡や手続きを進めます。
① 安全を確保し、必要な治療を受ける
機械事故の場合は、機械を停止して二次災害を防ぎます。
頭を打った場合や大きなケガをした場合は、無理に作業を続けず、必要な救急対応や医療機関への搬送を行いましょう。
② 事故の状況を記録する
事故が起きた日時、場所、作業内容、ケガをした状況などを整理しておきましょう。
可能であれば、現場の写真や事故の状況を確認できる資料も残しておくと、後の手続きに役立ちます。
③ 労災保険の加入団体へ連絡する
労災保険に特別加入している場合は、加入団体へ事故の状況を連絡しましょう。
治療費や休業補償など、必要な給付請求の手続きを確認します。
実際に労災保険の給付対象となるかは、事故の状況や業務との関係などをもとに、労働基準監督署が判断します。
船員フリーランスも労災保険に加入できる?
船員の一人親方や個人事業主も、一定の条件を満たせば国の労災保険に特別加入できます。
対象となるのは、船員法第1条に規定する船員が行う事業を、原則として労働者を使用せずに行う方などです。
ただし、船舶の種類や総トン数、航行区域、実際の仕事内容などによって加入できるかどうかが異なります。
また、船会社などに雇用されている場合は、通常の労災保険の対象となるため、一人親方としての特別加入とは取扱いが異なります。
自分の仕事内容が対象になるか分からない場合は、加入団体へ確認しましょう。
まとめ|船内事故を防ぎ、万が一のケガにも備えよう
船内では、転倒・転落・機械へのはさまれや巻き込まれなど、さまざまな事故が起こる可能性があります。
特に濡れた甲板や船内階段、ウインチなどの機械設備では、作業前の安全確認が欠かせません。
事故を防ぐためには、作業場所の整理整頓や適切な保護具の使用、作業手順の確認などが重要です。
それでも、どれだけ注意していても事故が起こる可能性はあります。
船員の一人親方・個人事業主も、条件を満たして国の労災保険に特別加入すれば、仕事中のケガなどについて補償を受けられる場合があります。
安全対策と労災保険の両方を考え、安心して仕事を続けられる環境を整えておきましょう。
船員フリーランスの労災保険については、以下の公式ページをご確認ください。
公的な参考資料
国土交通省「2026年度船員災害防止実施計画(概要)」
国土交通省「船員災害発生状況について」
国土交通省「船員災害防止基本計画及び実施計画について」
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