公開日:2026年10月16日
最終更新日:2026年10月16日

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はじめに
船員として働いている方なら、「船員保険」という名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。
一方、仕事中のけがに備える保険として「労災保険」もあります。
「船員保険に入っていれば、労災保険はいらないの?」「個人事業主になったら、今までの保険はどうなるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
実は、船員保険と労災保険は、役割が異なる公的な保険制度です。
この記事では、2つの制度の違いと、フリーランス船員が知っておきたい労災保険の特別加入について解説します。
船員保険とは?どんなときに使える保険?
船員保険は、船員とその家族の生活を支えるために設けられた公的な医療保険制度です。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の船員保険部が運営しています。
主に、仕事以外での病気やけが、出産などに対する給付を行っています。
例えば、休日に体調を崩して病院を受診した場合や、仕事とは関係のないけがをした場合などです。
また、病気やけがで働けなくなった場合の傷病手当金など、所定の要件に応じた給付もあります。
さらに、船員という仕事の特殊性を考慮した独自の給付が設けられていることも特徴です。
ただし、船員として働いている方が全員、自動的に船員保険へ加入するわけではありません。
加入資格は、船舶所有者との雇用関係などによって決まります。
船員保険と労災保険の違いは?
船員保険と労災保険の大きな違いは、補償する内容です。
船員保険は主に仕事以外の病気やけが、労災保険は仕事中や通勤中のけが・病気などを対象としています。
2つの制度を比較すると、次のようになります。
| 比較項目 | 船員保険 | 労災保険 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 医療保障・船員独自の給付 | 仕事中・通勤中の災害補償 |
| 主な対象者 | 船舶所有者に使用される船員など | 労働者、特別加入が認められた事業主など |
| 仕事以外の病気・けが | 原則として対象 | 原則として対象外 |
| 仕事中のけが | 所定の上乗せ給付など | 原則として労災保険で補償 |
| 運営 | 全国健康保険協会 | 国 |
例えば、休日に自宅で転倒してけがをした場合は、船員保険などの医療保険が関係します。
一方、甲板作業中に転倒して骨折した場合は、業務上の災害として労災保険の対象になる可能性があります。
実際にどの制度の給付対象となるかは、事故の状況や加入資格などによって判断されます。
船員保険に入っていれば、仕事中のけがも補償される?
船員保険に加入していても、仕事中のけがや病気については、原則として労災保険で手続きを行います。
2010年1月の制度改正により、それまで船員保険が担っていた職務上の災害補償は、労災保険制度へ移行しました。
そのため、船員保険と労災保険のどちらを使うか、自由に選ぶ仕組みではありません。
船員保険から上乗せ給付を受けられる場合もある
ただし、船員保険には、労災保険の給付に加えて受けられる独自の給付があります。
例えば、職務上のけがで働けなくなった場合、所定の要件を満たす船員保険の被保険者は、労災保険の休業補償給付に加えて、船員保険の休業手当金を受けられる場合があります。
これは、船員法に基づく災害補償と労災保険の給付との違いを調整するための仕組みです。
つまり、船員保険と労災保険は、互いに関係しながら船員を支える制度でもあります。
ただし、こうした上乗せ給付は船員保険の加入資格などが前提です。労災保険に特別加入したフリーランス船員が、必ず受けられるものではありません。
フリーランス船員も船員保険に加入できる?
フリーランス船員の場合、船員保険に加入できるかは、実際の働き方によって異なります。
船員保険の強制被保険者は、原則として船員法に規定する船員として、船舶所有者に使用される方です。
そのため、船会社などに雇用されている船員と、独立して仕事を請け負う個人事業主では、保険の取扱いが異なることがあります。
例えば、船会社を退職して個人事業主になった場合、これまで加入していた船員保険の資格を失うことがあります。
その場合は、国民健康保険などへの切り替えや、要件を満たす場合の疾病任意継続などを確認する必要があります。
なお、契約書に「業務委託」と書かれていても、実際には雇用関係が認められる場合があります。
契約の名称だけで判断せず、実際の働き方を確認することが大切です。
船員保険に入っていないフリーランスは、仕事中のけがにどう備える?
船員保険に加入していないフリーランス船員も、所定の要件を満たせば、国の労災保険に特別加入できます。
労災保険は、通常、会社に雇用されている労働者を対象とした制度です。
しかし、船員の一人親方や個人事業主についても、一定の条件を満たすことで加入できる仕組みが設けられています。
これを「労災保険の特別加入制度」といいます。
特別加入すると、仕事中のけがや病気などについて、国の労災保険から給付を受けられる場合があります。
主な補償には、次のようなものがあります。
- 療養(補償)等給付:仕事が原因のけがや病気について、必要な治療に対する給付
- 休業(補償)等給付:療養のため働けない場合の、所定の要件に応じた給付
- 障害(補償)等給付:一定の障害が残った場合の年金または一時金
- 遺族(補償)等給付:仕事が原因で亡くなった場合の、遺族への給付
ただし、実際に補償されるかは、業務内容や事故の状況などをもとに判断されます。
また、労災保険の特別加入は、健康保険の代わりになる制度ではありません。
独立して働く場合は、普段の病気やけがに備える医療保険と、仕事中の事故に備える労災保険を分けて考えましょう。
船員として独立するときに確認したい3つのこと
これから船員として独立する方は、次の3つを確認しておきましょう。
① 現在の船員保険の加入資格
船会社などを退職する場合、船員保険の資格がどうなるかを確認しましょう。
資格を失う場合は、国民健康保険などの医療保険への切り替えが必要になります。
② 独立後の仕事内容と契約形態
船舶の種類、担当する作業、取引先との契約関係などを整理しましょう。
船員の特別加入では、船員法上の船員が行う事業に該当するかなどが重要です。
③ 仕事中のけがに備える労災保険
個人事業主として働く場合は、自分自身の仕事中のけがに備える方法も確認しましょう。
船員の特別加入制度を利用できるか、仕事内容や従業員の雇用状況などを加入団体へ相談することをおすすめします。
まとめ|船員保険と労災保険は役割が違う
船員保険と労災保険は、どちらも船員の生活を支える公的な制度ですが、補償する内容や加入対象が異なります。
船員保険は主に仕事以外の病気やけがなどを保障し、労災保険は仕事中や通勤中の災害を補償する制度です。
また、船員保険の加入者は、労災保険の給付に加えて船員保険独自の給付を受けられる場合があります。
一方、フリーランスとして独立する場合は、船員保険の加入資格や、仕事中のけがに対する補償を改めて確認する必要があります。
船員の一人親方・個人事業主も、条件を満たせば国の労災保険に特別加入できます。
自分の働き方に合った制度を確認し、仕事中の万が一に備えましょう。
船員フリーランスの労災保険については、以下の公式ページをご確認ください。

公的な参考資料
全国健康保険協会「船員保険制度の目的」

全国健康保険協会「被保険者とは」

全国健康保険協会「平成22年1月からの船員保険制度改正概要」

厚生労働省「労災保険への特別加入」
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